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相続について

「争続」を防ぎ、「想続」を実現するために

「争続」を防ぎ、「想続」を実現するために
「相続」という言葉に触れたとき、最初に何をイメージされますか?
「うちはたいして資産があるわけでもないし関係ないだろう」「その時になってから考えれば良いだろう」「何らかの準備をしなければならないのかもしれないがきっかけがない」など、確かな裏付けのないままにその場をやりすごしてしまったり、いまひとつ前向きに考えることができず遠い将来のこととして無意識のうちに日常から遠ざけている人も多いのではないでしょうか。

確かに相続は人の死によって発生する法的手続きであるため、年齢が若ければ若いほど、健康的な生活を送ることができている人ほど、日常生活を通じて自分の死後を積極的に考える契機は少なく、ともすれば縁起が悪いテーマであると避けてこられたのも当然のことかもしれません。

よって、これまでの時代には事業を経営している家庭や先祖代々受け継いできた資産を承継していかなければならない場合など、積極的に資産防衛をしなければならない事情を抱える場合を除いては、先立って相続に関する問題を検討することは非日常的なテーマでありました。

しかしながら、今や時代は変わりつつあり、「相続」というキーワードをもってテレビや新聞などのメディアで取り上げられることは度々で、書店に足を向ければ相続にまつわる書籍が数限りなく置かれるようになりました。
それだけ人々が注目していることの証左であり、人生の先々を考える際に避けては通れない重要なテーマであることが認識されるようになったのだと思います。
では何故、「相続」が身近なテーマとして取り上げられるようになったのでしょうか。
個人的には次の2点がその背景にある大きな要因であるように感じています。

まず一つ目に挙げられるのは「家族の在り方」の変化です。
先ず数値的な背景をみてみると、現在我が国の一世帯あたりの人員数平均は3人を割り、2.47人となっています(厚生労働省:国民生活基礎調査より)。
戦後の1950年代には5人であったことから、この半世紀の間に一世帯あたりの人員規模が半分にまで縮小したことになります。

これは少子化の影響を受けていることは間違いありませんが、一方で2世代、3世代同居世帯が大幅に減少していることも要因のひとつとして挙げられます。

親子世代の同居が一般的であった時代には、生活空間の共有とともに思いや財産の共有もなされていたため、親子間での直截的なメッセージがなくとも、家族に万が一が生じたときの対応についても暗黙の了解的に共有されやすい時代でした。

ところが核家族化の進行により親子世代の別居が一般的となった昨今では、親世代、子世代がそれぞれ独立した価値観のもとに、思いや財産も独立したかたちで存在し、生活が営まれる時代となっています。
 
つまり、財産の所有が「家」という単位から分離され、個人に帰属するものと捉えられる時代となりました。
そうすると、例えば親が自分の死を契機とした相続を考える場合、自分が遺した資産等がどのようなかたちで遺族に還元されていくのか、自身の遺族への思いが強ければ強いほどそのメッセージを事前に伝えていかなくてはなりません。

時代が変わって家族の在り方が変わっても、家族への思いの在りようはいつの時代も変わりません。
日頃の生活を通じて思いを共有できる機会が少ないからこそ、家族を構成する個々人が「自分が前もってできること」「自分が前もってやるべきこと」などについて学ぼうとする流れが生じていると思われます。

そして二つ目として挙げられるのが、「終活」がライフイベントのひとつとして前向きに捉えられるようになったことです。
自分の人生をいかに最期まで意志を反映させ、自分らしく生き抜くか、そのような姿勢、価値観が多くの人々の共感をよび、今では「終活」の名の下で様々な活動が行われるようになりました。

その中で保有財産の棚卸しを進めることも多く、この場合最終的には遺した財産の行き先を検討する機会にもなり得ます。
財産承継の視点から、いかに自分の意志を反映させることができるかを考えるとき、それは相続という領域において様々な対策を講ずる行為に移っていくことになります。
 
このように、今や自らが亡き後の資産承継についても自らの意志を示し、それが遺された人々によって実現されるように、前もって道をつくっておくことが家族への思いの表現であると評価される時代となりました。
保有資産の規模に関わらず、人が亡くなることによって必ず相続手続きは発生します。
何の準備もしないままに遺族を「争族(そうぞく)」に導くのではなく、思いを伝え円満な「想族(そうぞく)」を実現するために、今のうちからできることを一緒に考えてみませんか。

知っておきたいこと

知っておきたいこと

相続対策と相続税対策は異なるもの

「相続対策」と聞いて税金対策をイメージする人が多いのですが、実際には相続対策とは人が亡くなった場合に遺族への資産承継等がスムーズに行われるように予め準備をしておくことであり、一方で相続税対策とは、相続税が発生しそうな場合に備えて資産評価額の圧縮を試みたり、納税資金を準備しておくことなどを意味します。
 
つまり、相続税対策は相続対策における部分的なことであり、来たるべき相続に備えて万全の準備をするためには広範囲にわたって課題を検討する必要があるのです。

相続税納税者の割合

相続件数全体にに占める相続税納税件数の割合はどのくらいだと思いますか?2015年1月に相続税制における基礎控除額の改正があり、基礎控除額が4割縮減されました。

この改正により納税対象者の大幅な増加が見込まれ、実際に納税対策が講じられるケースも増えました。

では実際に改正により相続税の納税者数にどのような変化があったのでしょうか。改正の前年の2014年に相続件数に占める割合が4.4%であったのに対し、改正後の2015年は8%、2016年は8.1%となっています。
(公益財団法人生命保険文化センター資料より)
納税者数は2倍近く増加しましたが、それでも全体の1割に達することなく、9割強のケースが相続税の生じない相続手続きとなっています。
 
つまり、前もって納税対策を必要とするケースがそれほど多くない中で、人の死によって必ず発生する相続手続きをいかにスムーズに行うかといった視点に基づく相続対策が必要とされています。
<参考:相続税の基礎控除額の改正>  
(改正前) 5,000万円+1,000万円×法定相続人の数 
(改正後) 3,000万円+ 600万円×法定相続人の数

相続のトラブル化が顕著な時代に

相続が争い事になる、それはお金持ちの家の話だと他人事に考える時代ではなくなっています。
2012年度司法統計によると、家庭裁判所への相続関係の相談件数は10年間で1.9倍に、また遺産分割事件として取り扱われた件数は10年間で1.4倍に増加しています。 なお、2015年度司法統計によると、遺産分割について家庭裁判所の調停にもちこまれた件数が約8000件あった中で、その75%は遺産総額が5,000万円以下の事案であり、さらにいうと32%は1,000万円以下の事案でした。

これらの額は決して少額ではありませんが、一部の富裕層にだけ関係する資産額といえるほどの数字でもなく、今の時代では一般的な家庭で保有しうる資産額でもあります。これらの数字が表しているとおり、相続争いは遺産額の多寡にかかわらず、様々な要素が絡み合うことでどの家庭でも起こりうる潜在的なリスクなのです。

意外と負担の大きな相続手続き

大切な家族を亡くしたとき、遺族は悲しみに暮れる暇なく葬儀をはじめとした様々な手続きを進めなければなりません。

その中でも故人の財産を然るべき人に承継する手続きである相続は選択する方法によっては期限が設けられていることもあり、遺族にとっては大きな負担となる手続きでもあります。

マイナスの財産も含めてすべてを引き継ぐのか、もしくは相続自体を放棄するのかなど、相続の形態を選択することができますが、その形態によっては相続の開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申し出を行う必要があり、また相続税が発生する場合には10か月以内に税務署への申告が必要になるなど、期限を意識しながら手続きを進めていかければなりません。

そして、それらの手続きを進めるうえで一番の肝になるのが遺産分割内容の確定です。
故人の財産について、誰に何をどれほど承継するのかを確定しなければその先の手続きが進められず、金融機関に対する預金については払い出しを受けられずに必要な費用の支払いもできないといった事態に陥る可能性もあります。

このような後続の手続きをスムーズに進められるよう遺族による遺産分割についての話し合い(遺産分割協議)の場を設ける必要があるのですが、葬儀等を終えて間もないタイミングでの協議は遺族にとってとても大きな負担となり、場合によっては個々の感情が錯綜することにより協議がまとまらず、平行線をたどるケースも少なくありません。

だからこそ、万が一の事態に備えて対策を立てておく必要があるのです。
<参考:相続の3つの形態>
①単純承認:借金などのマイナス財産を含めて全ての財産を相続すること。
②限定承認:借金などのマイナス財産をプラスの財産の範囲で相続すること。
③相続放棄:プラス財産もマイナス財産もすべての相続を放棄すること。
※②もしくは③を選択する場合は、相続の開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ申し出なければならない。
何の申し出もなく3か月が経過した場合は単純承認をしたものとみなされる。

元気なうちに早めの対策が大切

「相続?今はまだ元気だから、まだまだ先の話だ。」 このように考える気持ちは分からなくもありません。

たとえば、相続対策としての遺言は法律行為であり、本人の意思表示によってはじめて効果が生じます。
 
しかし、本人の意思能力が十分でない状態で何らかの意思が表示されたとしても、法的には「無効」となってしまいます。
例えば認知症を患って判断能力が減退している方が、その時点で遺言を作成して遺産分割について意思表示をしたとしても、意思能力が不十分だったとして後々遺言書の効力が否定される可能性があります。

また、認知症等により意思能力が不十分な常況にある方は自らの意思で財産の処分をすることが法的に認められず、後見人等によって財産管理がなされるため、財産処分の手続きにおいて、より自由度が低下することも考えられます。
 
このように、「体が弱ってきたから、そろそろ相続に備えて準備を」と思っても、場合によっては「時すでに遅し」という事態に陥る可能性があることを念頭におき、2025年には認知症患者は700万人を超え、高齢者の5人に1人が認知症を患うと予測されている時代であるからこそ、元気なうちに早めの対策を講じることが何より大切だと考えます。

法定相続人および法定相続分

誰がどれだけの財産を相続するのかについて、民法では相続する権利を有する人として「法定相続人」を、相続できる財産割合として「法定相続分」が定められています。

残された遺族の構成によって相続人になりうる順位が決まっており、遺産分割におけるひとつの目安となっていますが、必ずしも法定どおりに遺産を分割しなければならないわけではありません。

自分が亡くなったときに、「妻には今後の生活を考えて全財産を渡したい」「一定の財産を法定相続人以外の大切な人に渡したい」など、予め意思表示することにより法定相続とは異なった内容での相続を実現することも可能です。

仮に法定相続分通りに遺産を分割したいと考えても、相続財産がすべて預貯金などの可分財産である場合には相続人間で均等に法定相続分で分割することはできますが、相続財産に不動産などの不可分財産が含まれる場合などには均等に分割できないことも多々あるのが実情です。
 
であるからこそ、安易に法定相続分どおりの相続を想定するのではなく、保有する資産構成や家族構成を鑑みた現実的な相続を実現するために、前もっての計画、対策が必要になるのです。
<参考:法定相続人の範囲と順位>
・配偶者(夫または妻)→常に相続人となる
・子ども(直系卑属)→第1順位 ・父母(直系尊属)→第2順位
・兄弟姉妹(傍系血族)→第3順位

遺産を放置しておくと厄介な問題が生じる

人が亡くなり相続が発生すると、その遺産はその時点から法定相続人による「共有」という状態におかれます。

例えば、父親が亡くなり、その法定相続人がその配偶者と子ども2人である場合、父親名義の不動産は父親の死亡に伴い、 自動的に法定相続がなされ、不動産の持ち分は配偶者1/2、子どもそれぞれが1/4ずつとなります。 この状態を「共有」と呼びます。

その後、当該不動産について何の法律行為も及ばないようであれば特に問題はありませんが、 例えば後々売却などを検討する場合には権利関係が複雑になり、その分手続きも煩雑になってしまいます。
 
現預金など可分財産であればそのような問題は生じませんが、不動産を共有の状態におくことは後々のトラブルにつながる恐れがあるので、早々に共有の解消を行うことをお奨めします。

相続対策と遺言書

相続対策と遺言書
相続対策とは人が亡くなった後にその故人の財産の承継を確実なものとし、遺族が支障なく生活を送ることができるように備えることです。
 
つまり、故人の財産をどのように引き継ぐのかについて予め道筋を立て、その内容を実現するために、予めの方策を講じること表します。
よって、相続について何かしらの思いを抱いていたとしても、自身の心の内に留めたまま表明されることがなければ、それは何の対策もなされなかったことに等しく、自身の思いが相続としてのかたちに反映されないだけでなく、場合によっては遺族に大きな負担を強いる結果にもなりかねません。

遺産の承継について故人の遺志が遺族に渡っていなければ、遺族はその承継に際し法定相続分をひとつの手がかりとして遺産分割の手続きを進めることになりますが、法定相続の割合で分割を実現することは現実的にそう簡単なことではありません。
というのも、一般的な家庭においては、資産のうちの大半を住宅などの不動産が占めることが多く、現預金の保有比率と比べた場合の差は大きくなっています。
(国税庁資料によると、相続財産の構成比率は不動産が約50%、現預金が約25%)

住居としての不動産が相続財産になった場合でも、その後も遺族のうちの誰かがその不動産を生活の拠点にしなければならないことなどを理由に、不動産をそのままのかたちで残さなければならないケースも少なくありません。

また、現金化しようと不動産の売却手続きを進めても、不動産の余剰化が叫ばれる今の時代には望むタイミングで売却が実現できるともかぎりません。

特に流動性の低い資産を中心に遺産分割が試みられる場合には、目安とする法定相続分とはかけ離れた分割が余儀なくされ、相続人の間で不満が噴出したり、感情がぶつかり合うことにより遺産分割協議がまとまらず、相続手続きが暗礁に乗り上げてしまうリスクが潜んでいます。
 
このようなリスクに遺族がさらされることを防ぐ方法として、そして何より、相続への自らの思いをかたちにするための手段として、「遺言書」という制度が存在するのです。
「遺言書」と聞いて、前向きに積極的に捉えられる人はそれほど多くないかもしれません。
「遺書」との違いが分からない人もいらっしゃるかもしれません。
そのような方はぜひ、これを機にご理解いただければと思います。

遺言書には法的効力がある

遺言書はその形式等が法律で定められており、その決まりの則って作成しなければなりません。
よって、決まりに反したものは法的に無効となるので作成にあたっては慎重に臨む必要があります。決められたルール通りに作成された遺言書は法的な効力をもつため、遺族等は基本的にその内容に従って後の手続きを進めることになります。
 
つまり、遺産の分割方法について遺言書による指定があれば、それに基づいて相続手続きを進めることができます。
 
一方で、遺書は死に際して個人的に残されるメッセージであり、形式などが決められたものではなく、そのため法的な効力はもちません。
 
このように遺言書と遺書はまったく異なるものであり、遺言書はそれほどの強いメッセージを発信することにより、遺族等へ自分の思いを託す厳格なものなのです。

遺言書を残すことによるメリット

相続手続きをスムーズに進められる
人が亡くなり、その故人の財産を引き継ぐ場合、金融機関での手続きや資産の名義変更など数々の手続きをしなければなりません。
遺言書が遺されていない場合には、遺族(法定相続人)が遺産の分け方について話し合い(遺産分割協議)を行い、そこで決まった内容をまとめ(遺産分割協議書)、相続人全員の印鑑証明書を準備したうえで、資産ごとに手続きを行わなければなりません。
相続人が遠隔地に存在したり、相続人の中に認知症等により判断能力が衰えた人がいる場合には遺産分割協議を行うまでの道のりも長く、遺産分割協議が行われたとしても、すぐに話がまとまるともかぎりません。
一方で、遺言書により遺産の分割について予めの指定がある場合には、相続人の中からその分割方法に異論が出ないかぎりは遺産分割協議を行う必要がなく、遺言書に従って指定を受けた相続人が個別に名義変更等手続きを進めることができます。
 
つまり、相続手続きの簡素化を実現することができるのです。

遺言者の思いをカタチにして、遺族への負担を軽減できる
遺言書は自身が遺した財産の承継を自身の思いを反映させるかたちで実現できる貴重な手段です。
何の準備もせずに法定相続人が法定相続分の割合で、ある意味きれいに相続手続きが進められることは理想ですが、資産の構成内容や遺族各々の思いなどにより、法定相続分に従って平等にとはいかないケースが一般的であり、ともすれば相続トラブルへと発展し、家庭裁判所の調停・審判を仰ぐ件数も年々増加しています。
このような傾向は、故人の生前の意思を慮りながら残された遺族が遺産の分割について話し合い、まとめるという工程が想像以上に多難で大きな負担を強いることの表れであるといえます。
遺族に余計なトラブルや負担を生じさせることのないよう、具体的な遺産分割方法を指定し、遺族が進むべき道筋をつくることが家族への思いの表現であり、それを実現できるのが遺言書なのです。

遺言書に対する誤解

遺言書を書くなんてまだ早い
遺言書を作成できることの要件としては次の2点が法律上決められています。
①遺言者が15歳に達していること
②遺言者に遺言能力があること
①の年齢要件については下限が設けられているものの上限は設けられていません。つまり、法律上は何歳になっても遺言書を作成することができます。
しかし、注目すべきは②の要件です。
「遺言能力」とは残した遺言書の内容を理解でき、さらに、その遺言書がどのような結果をもたらすのかについて理解できる能力のことをいいます。
裁判にて遺言能力の有無が争われる事案の大半が、認知症等により判断能力が低下した高齢者の遺した遺言書についての効力の有無についてです。
超高齢社会の到来により認知症患者数の増加が予測されていますが、争い事への種を蒔かぬよう遺言能力が確かなうちに遺言書を作成することが重要であり、早すぎるということはないのです。

遺言書は資産家が残すもの
「うちはたいして財産がないから遺言書はなんて」と思われる方は少なくありません。
しかし、実際に遺言書は財産が多いときにだけ必要なのではなく、財産の多寡に関係なく遺族のために財産承継の道筋をつくるものなのです。
家庭裁判所で争われる事案の大半は一般家庭が保有するほどの財産についての相続トラブルです。
資産額の大半を居住用不動産が占める場合には、その不動産をどのように承継するのかについて考えておくことが大切です。 

うちは遺言書がなくても円満に相続してくれる
平時には円満であった家庭も、大切な家族が亡くなり、いざ相続手続きという特有の場面に直面すると状況が一変することも少なくありません。
その時の相続人の家庭の状況や相続人の配偶者からの意見など、遺産分割への考えを左右する要素は多種多様です。
このように相続人の思いが錯綜することが多いのが相続であり、それまで円満であった家族関係が相続トラブルを機に破綻するケースも珍しくありません。
相続人の権利意識が高まっているこの時代には、相続における遺産分割を平時の延長線上で捉えるのではなく、相続人になりうる家族の状況をも鑑みて、考えられることへの対策をたてておくことはとても大切なことです。

遺言書を作成したら財産を処分できなくなる
遺言書を作成した後に気が変わったら・・・と考えるあまり、遺言書の作成を躊躇される方も多いと思います。
しかし、遺言書には次のような特徴があるため、一度作成したからといって、その遺言内容に拘束をされるわけではありません。
  • 遺言は相手方のない単独行為である
  • 遺言の内容と抵触する生前処分の行為は遺言を撤回したものとみなす
  • 遺言を残した人が亡くなったときから、遺言の効力が生じる。
遺言書を作成しても、その効力が生じるまでは、つまり亡くなるまでその内容を変更することは自由なのです。遺言書にて相続の指定をした財産を処分すれば、遺言書の意思は撤回されたものとみなされることになります。
このような特性を分かると、遺言に対する気持ちのハードルが下がるのではないでしょうか。

遺言書にて対策を考えたい様々なケース

お子様のいないご夫婦の相続
お子様がいらっしゃらないご夫婦の一方が亡くなった場合の相続について、法定相続人は残された配偶者と亡くなった方の直系尊属(父母もしくは祖父母)または兄弟姉妹となります。
残された配偶者の以後の生活を守るために配偶者に一定の財産を承継したいと考えていても、何もしなければ上記のような法定相続人が法定相続分を引き継ぐ権利を有します。
残された配偶者のために、法定相続とは異なったかたちで多くの財産を配偶者へ承継したい場合には、遺言書による指定が有効な手段となります。

生前の関係性を踏まえた相続を実現したい
相続人が複数いる中で、例えば長女には介護で世話になっているから他の相続人よりも多くの財産を承継したいなど、生前の相続人との関係性を考慮して相続財産の多少を実現したい場合には、遺言書により遺産分割の指定をすることもひとつの方法です。
法律においては「寄与分」という制度が設けられており(民法904条の2第1項)、被相続人(故人)の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加について特別な寄与をしたものがある場合には、遺産分割に際し、本来の相続分よりも多くの財産を承継させることを認める制度があります。
しかしながら、このように民法で定める寄与とは、介護をすること自体を意味するものではなく、故人の財産の維持、増加に影響を与えたという「特別の寄与」の有無により判断されます。
よって、介護などの身上監護による貢献が多大なものであったとしても、それが特別な寄与であったと認められるためのハードルは高いため、その貢献を高く評価し、感謝の意を相続分に反映させたい場合には、遺言書による相続分の指定が不可欠となります。

同居している子どもに居住不動産を残したい
お子様が複数人いらっしゃる方が、そのうちのおひとりのお子様と自身が保有する不動産に同居されている場合に、自分が亡くなった後も引き続き、そのお子様に当該不動産で生活をしてもらいたいと考えるケースは少なくありません。
残された家族の話し合いにより、亡くなった方の意思が引き継がれ、その不動産が同居をしていたお子様に相続されれば問題はありませんが、残された家族(相続人)の間で法定相続分を主張するなどにより、不動産を換価するために売却することを余儀なくされる事態も起こり得ます。
このような事態に陥ることを防ぐためにも、特定の財産を特定の人に相続させたい場合には、遺言書にてその意思を明確にしておくことがとても大切です

法定相続人以外に財産を渡したい
法定相続人以外に財産を渡したい人がいるという場合には、遺言書にてその旨を指定する必要があります。
例えば、長男の配偶者には特にお世話になっているから、それなりに感謝の気持ちを表したいという場合や、遺産を団体や機関などに寄付をしたい場合に、それを確実に実現させたいときは遺言書により意思を表明することが大切です。

法定相続人になりうる人の中に認知症等により意思能力が衰えている人が存在する
亡くなった方の遺言書が残されていなければ、法定相続人は遺産分割協議により分割内容を決めなければなりません。
そしてこの遺産分割協議に参加するには「意思能力」を備えていなければならないという条件があります。
「意思能力」とは言い換えると判断能力です。
よって、認知症により判断能力が衰えている人が遺産分割協議に参加したとしても、その協議は無効となってしまうので、このような場合には成年後見人を選任してもらい、本人に代わって成年後見人が協議に参加するなどの手続きを要します。成年後見人の選任には家庭裁判所への申し立てが必要になり、時間と負担がそれなりにかかることになります。
ご家族の中に意思能力が衰えている方がいらっしゃって、その方が法定相続人になりうる場合に、上記の成年後見人の申し立てを避けたいと考えるならば、遺産分割協議を行う必要がなくなるように、予め遺言書にて遺産分割の指定を行うことも有効です。
 

遺言の方式

遺言の方式、種類については法律にて定められており、次のように分類され、いずれかを選択して作成することになります。
<普通方式>自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言  
<特別方式>危急時遺言 隔絶地遺言
通常は普通方式が選択され、その中でも一般的に採用されているのが「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。

自筆証書遺言
作成者 遺言者本人
作成方法 遺言者本人が全文を自書し、記名、押印をする
保管方法 遺言者本人が保管するか、もしくは信頼のおける人に委ねる
メリット ・費用がかからず、手軽に作成できる
・作り直しがしやすい
デメリット ・形式的な面で無効になる可能性がある
・紛失する可能性がある
・自分で保管する場合に、遺族に発見されない可能性がある
・遺言者の死後、検認のための時間を要する
公正証書遺言
作成者 公証人
作成方法 証人2名の立ち合いのもとで、公証人へ内容を伝え、公証人が作成する
保管方法 公証役場にて保管される
メリット ・形式的な面で無効になる可能性はなく、遺言内容が実現される可能性が高い
・原本の紛失リスクがない
・遺言者の死後、検認の必要がない
デメリット ・作成に時間を要する
・費用を要する
それぞれにメリット、デメリットがありますが、残された遺族にとってありがたいのは公正証書遺言です。
公正証書遺言は自筆証書遺言に比べると作成の段階で時間や費用がかかることは確かですが、形式的に無効になる可能性が低く、遺族の負担が軽減されるとともに、遺言内容が実現される可能性が極めて高いため、当事務所といたしましては、公正証書遺言の作成をお奨めしております。

遺言書作成の動向

自筆証書遺言については家庭裁判所より検認の件数として、公正証書遺言については日本公証人連合会より作成件数が、それぞれ公表されています。
作成された自筆証書遺言のすべてが検認をうけているわけではないので検認件数は実際の作成件数より低い数字となりますが、それでも年々増加傾向にあります。
公正証書遺言については、10年前に7万件ほどでありましたが、現在では10万件を超えるほどまでに増加しており、超高齢社会を迎えて今後もさらなる件数の伸びが予想されます。

相続対策のポイント

相続対策のポイント
相続対策としての遺言書の効用については上述のとおりですが、遺言書だけでは実現できないこともあります。 相続対策を万全なものとするために、次のようなことも念頭に置くことも重要です。

資金化

遺言書により遺産分割方法を指定した場合には、その内容が法定相続分より優先されることになりますが、法律では一定限度の割合を相続人に保証する制度が設けられています。これを「遺留分」といいます。
相続人のすべてが遺言内容に納得すれば良いのですが、「自分にはもっともらう権利がある」と主張する相続人がいる場合には、遺留分を請求する権利を認めています。
その遺留分を主張できる権利を「遺留分減殺請求権」といいます。
遺留分減殺請求がなされた場合には遺留分の範囲で請求権者に財産を引き渡さなければならないのですが、請求額に見合った財産がなく現金もなければ、最悪の場合には不動産を換価して資金を捻出しなければなりません。

このような事態に備えるためにも、相続財産が不動産などの不可分財産に偏ることのないよう予めの対策が必要です。

不動産の相続対策

昨今、不動産価格は二極化が進んでいます。
都市部などの一定のエリアでは地価が高騰し高額なマンションの販売が堅調だというニュースを耳にしたりします。
しかし、その一方で都心や都市部から離れたいわゆるベットタウンと呼ばれた地域では地価の下落とともに、1970年代から80年代に建てられた建物が老朽化するなどの問題を抱えるようになりました。
以前であれば不動産神話、土地神話とまで言われたように、不動産は当然に価値を生み出すものと捉えられ、実際に不動産は有効な資産として活用されてきました。ところが最近では事情が変わりつつあります。
人口減少の時代を迎えたことなどにより不動産の余剰化が進行し、今や全国で空き家が820万戸にも達しています。
このような状況下においては、不動産価値は一部の地域を除いて益々下落傾向を強めることが予測されることから、相続における不動産の取り扱いについても、従来とは異なった視点で捉える必要があります。
特に居住用としてではなく相続する不動産については、維持管理費用等をも念頭におき、不動産が「負動産」化してしまうことのないよう検討することも大切です。

生前に起こりうる事態に備える

遺言書の効力が生じるのは遺言者が亡くなったときです。
そのため、遺言書を作成した後の生前に、遺言者の身の周りで変化が起こった場合の対策も検討する必要があります。何かしらの変化が生じたときに遺言書を書き換えることができれば良いのですが、そのときに遺言者が認知症等により遺言能力が衰えている場合には遺言書を書き換えることはできません。
また、成年後見人が選任されたとしても、成年後見人は遺言書を作成することはできません。
このように生前に起こりうるリスクへの備えとして、遺言書や成年後見制度の利用では対応できないこともあるため、備えを万全のものとするために信託制度を活用するなど、確実な手段を別途講じることも大切です。

2次相続対策

一家の主を亡くし、その際の相続財産評価額が高い場合でも、その大半を故人の配偶者が相続することにより、納税額を圧縮したり、納税をしなくても済むようにできるケースがあります。
「配偶者の税額の軽減」という制度があり、配偶者が相続する場合に法定相続分相当額または1億6,000万円までは相続税がかからないというものです。
かなりの大きな枠であるため、高額の不動産を相続する場合などに有効な制度であることは間違いないのですが、後々のことも考えておく必要があります。
1次相続で「配偶者の税額の軽減」を利用して高額の資産を相続した配偶者が亡くなれば2次相続が発生しますが、その際には法定相続人の数も少なくなると同時に、「配偶者の税額の軽減」は利用できません。
つまり、相続財産評価額を軽減させる手段が限られてしまい、場合によっては納税資金を捻出するために資産の売却を余儀なくされるということも考えられます。
不動産の評価額を圧縮する手段として「小規模宅地の特例」という制度も存在しますが、この制度は一定の要件を満たさなければなりませんので、高額な資産を相続する場合には2次相続のことも念頭において手続きを進めることが重要です。

相続対策と家族信託

相続対策と家族信託
「信託」という言葉に触れたときに「信託銀行」や「投資信託」などをイメージする人が多いかもしれませんが、平成18年に信託法が改正され、信託は私たちの生活にとってより身近なものとなり、「家族信託(民事信託)」という手法が相続や財産管理の観点から注目を集めています。

では、この家族信託とはどのようなものなのでしょうか。
簡単にまとめると次の通りとなります。

『自分が所有する財産を家族など信頼できる人に、予め定めた目的に従って管理・運用を任せ(名義を移して)、その財産から得られる利益は自分または自分が指定する第3者に得させること』です。
家族信託においては、 財産の管理を任せる人を「委託者」、財産の管理をする人(管理を任される人)を「受託者」、利益を得る人を「受益者」と呼びます。
尚、家族信託を設定するには、信託契約または遺言により指定することになります。

家族信託の特長

家族信託が注目されつつある背景には、この仕組みならではの機能を有すること、つまり、財産管理について他の手法で実現できないことを家族信託の仕組みを利用することでカバーできる利点があります。

相続や財産管理において、遺言や成年後見制度の利用は一般的ですが、それらの制度でも実現できない課題が残ります。
例えば、遺言による相続の場合、遺言者が亡くなるまでは遺言書の内容は実現できません。

よって、遺言書の作成後に認知症等になり意思能力が衰えた場合に生前の財産管理が難しくなります。

このようなケースでは成年後見制度を利用することも一つの方法ですが、成年後見人は本人に代わって遺言書を作成することはできないので、遺言書を書き換えるべく状況変化が生じた場合でも対応することができません。

また、成年後見人が本人に代わって財産を処分する場合には家庭裁判所の許可が必要になるなど、柔軟性に欠ける点は否めません。
 
つまり、生前に本人の意思能力がなくなったときに、本人の意思を継いで本人の意思を反映した資産の管理・活用を実現する手法が限られる中で、家族信託はそれらの課題を実現しうる仕組みとして注目されているのです。

注目される主な利点

柔軟性のある財産管理を実現
生前に本人の財産管理能力が失われた際に、成年後見制度では実現できない本人の意思を引き継いだ財産管理を実現できます。
成年後見制度を利用した場合、後見人によるその財産管理は家庭裁判所の監督下で行われ、処分等行う場合には裁判所の許可を得なければなりません。
家族が後見人に就任し、本人の価値観や意思を代弁しうるとして財産の有効活用を試みようとしても、財産の管理、処分については同様に家庭裁判所の監督下で行われるため、そう簡単に実現できるものではありません。
このような事態を事前に回避するために家族信託の仕組みを利用することも、ひとつの方法です。

2次相続以降の承継先指定を実現
例えば、自分が亡くなったら事業用の不動産を長男のAに相続させ、長男が亡くなったら長男の子どものBに相続させたいと考えた場合、遺言では長男Aへの承継は指定することができますが、長男Aが亡くなったときのその後の承継(2次相続)については指定できません。

長男Aが亡くなったときの承継は長男A自身が決めることになっているからです。
この課題をクリアしうる仕組みが家族信託であり、信託契約にて設定すれば受益権を発生させることで先々までの財産承継を実現することができます。

このように2次相続以降の承継先を指定することを「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」と呼び、代々守っていきたい財産がある場合や 障害のあるお子様の2次相続を検討したい場合などに有効な手段となり得ます。

信託財産は相続手続きを要しない
信託財産については信託設定時に予めどのような目的で、誰のために管理・運用が任された財産なのかが明確になっているために、その時点での受益者が亡くなり相続が発生したとしても、相続手続きを必要としません。

信託契約にて次の受益者に設定された者に受益権が生じるため、相続手続きを経由せずに決められた目的に沿って管理・運用が継続されます。

よって、遺産分割協議等の手間を省くことができ、残された家族の負担を軽減できるという利点もあります。

相続税対策

相続が発生したときに、その相続財産に対して相続税が生じるのか否かについて、予め目処をたてておくことはとても大切です。
そのためには相続税に関する基礎知識を得たうえで、ある程度のシミュレーションを行い、相続税がかかる場合で何かしらの対策が必要な場合には税理士などの専門家へ事前に相談することも有効です。
相続見込み財産額から基礎控除額を差し引くだけでなく、その他税額控除や利用できる特例(配偶者税額控除、小規模宅地の特例など)にも留意をすることが重要です。
平成27年より基礎控除額が改正され、基礎控除額自体は4割縮小となったために、地価の高い地域に不動産を保有する場合などには資産額が基礎控除額を超えるケースが以前よりも多くなります。
よって、納税を要することが想定される場合には納税資金対策など、より広い視野での対策を講じる必要があります。

相続手続きの流れ

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代表 藤野 卓